こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
すっかり春らしい陽気となり、都内でもあちこちで桜の開花が見られるようになりました。
今シーズンは寒い日がとても多く、都内でこんなにも寒い冬を味わったのは久しぶりです。
ですので、ようやくやってきた春を存分に楽しみたいものです。
とはいえ、季節の変わり目は体調を崩しがちです。
ご利用者様はもちろんのこと、介護・医療従事者である私たち自身も、体調を崩さないように留意したいものですね。
コロナ感染者の推移も、まだまだ予断を許さない状況ですが、「やまない雨はない」という言葉を信じ、日々頑張ってサービス提供に励んでおります。
今回は、この4月から施行される「令和4年度診療報酬改定」について取り上げ、その中で私たち訪問看護にかかる変更ポイントや方向性について、取り上げさせていただきます。
お付き合いいただけますと幸いです。
訪問看護の主たる変更点の概要
訪問看護は、皆様ご承知の通り「医療保険」と「介護保険」の2種類に大きく分けられます。
双方が併用できるサービスは、実は大変少ないのが実情です。
反面、制度が非常に難解になってしまいがちになるのですが、患者様にとって適切なサービスが受けられるようにするためには、私たちサービス提供者が制度をしっかり理解しなければなりません。
訪問看護サービスを提供する法人として、このことは肝に銘じております。
以下、今回の診療報酬改定の概要をまとめたいと思います。
報酬額の変更等といった細かい内容は、ここでは割愛させていただきます。
診療報酬の改定が、訪問看護ステーションにどのような影響を及ぼすのか、また今後の訪問看護ステーションのあるべき姿と方向性とは何かについて、解説させていただきます。
1 2つの訪問看護ステーションが連携して24時間対応を行う体制の評価を拡大
2 機能強化型訪問看護ステーション、さらなる機能強化を期待
3 専門性の高い看護師の評価を充実し、訪問看護のさらなる質向上を目指す
4 退院当日の訪問看護を「訪問看護ターミナルケア療養費」でもカウントし、不合理を是正
となっております。
以下、改正の内容について一部取り上げたいと思います。
訪問看護管理療養費の「24時間対応体制加算」の評価

24時間対応体制加算については、多くのステーションで算定されておりますが、特に小規模な事業所では人員確保が難しく、算定を断念せざるを得ないケースも聞かれます。
そういう事情を考慮したのかどうかはわかりませんが、2つの訪問看護ステーションが連携して24時間対応を行う体制の評価が拡大されることとなります。
これまでは「特別地域(離島など)に所在する訪問看護ステーション」「医療を提供しているが、医療資源の少ない地域に所在する訪問看護ステーション」である必要がありました。
新たな取り扱いとして「BCP(後述)を策定したうえで『自然災害等の発生に備えた地域の相互支援ネットワーク』に参画する訪問看護ステーションについても、対象となります。
「自然災害等の発生に備えた地域の相互支援ネットワーク」の要件とは、
・都道府県、市町村または医療関係団体等が主催する事業である
・自然災害や感染症等の発生により業務継続が困難な事態を想定して整備された事業である
・都道府県、市町村または医療関係団体等が当該事業の調整等を行う事務局を設置し、当該事業に参画する訪問看護ステーション等の連絡先を管理している
上記をすべて満たす必要がありますが、対象要件が拡大することに伴い、1つの事業所で24時間対応の体制が整えられなくても、2事業所の連携で加算算定が可能になるというのは、よい話であると思われます。
事業継続計画(BCP)策定の義務化
BCPの策定については、令和3年度の介護報酬改定の際に全サービスに対して義務化されたところです。
3年間の経過措置期間が設けられておりますが、コロナ感染症の拡大や地震等の自然災害のリスクが高まる中で、最近BCP策定に関するセミナーや書籍がたくさん出ております。
今回、診療報酬改定においても、同様にBCP策定を義務付け、災害や災害級の感染症等発生時にも訪問看護サービスの提供が継続できるよう、体制の構築を目指すというものです。
医療と介護の両面において、足並みを揃える形になったと理解しております。
さらなる機能強化が期待される「機能強化型訪問看護ステーション」
今回の改定では、機能強化型訪問看護ステーションに対して、更なる体制の充実と質の向上を求める形になっております。
理由は、機能強化型訪問看護ステーションが24時間対応・重症者対応等、まさに「地域包括ケアシステムの要」と期待しているからです。
具体的には、機能強化型訪問看護管理療養費が増額されます。
同時に施設基準として「専門の研修を受けた看護師を配置することが望ましい」と、通知資料には記載されております。
機能強化型訪問看護ステーションには「地域の訪問看護提供のリーダー」となることが期待されることとなるでしょう。
関係機関との連携強化
近年、訪問看護ステーションでは高齢者だけでなく、精神疾患をお持ちの方や小児の方のニーズが大変高まっております。
この背景から、医学・医療の進歩による「医療的ケア児の予後が改善している」点と、現場における実態をより踏まえた形に移行する必要があるということで、中医協でも議論がなされました。
結果として、小児の対象年齢をこれまでの「15歳未満」から「18歳未満」にまで拡大することとなりました。
また、情報提供の提出先に「指定特定相談支援事業者及び指定障害児相談支援事業者(情報提供療養費1)」「高等学校・特別支援学校等(状況提供療養費2)」が追加されました。
この改定は、訪問看護の現場事情に即した内容になっています。
医療的ケア児の日常生活や学校生活等で、留意すべき点の情報提供が充実することで、生活の質そのものの向上が期待されますね。
訪問看護の「訪問リハビリ化」問題
令和3年度の介護報酬改定にて、訪問看護ステーションで提供されるリハビリサービスについて、大きな改定がありました。
簡単にご紹介しますと、
【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護】(1回につき)
297単位 → (改定後)293単位
【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による介護予防訪問看護】(1回につき)
287単位 → (改定後)283単位
【1日に2回を超えて(つまり3回以上)、介護予防訪問看護を行った場合の評価】
1回につき100分の90(10%減算) → (改定後)1回につき100分の50(50%減算)
【利用開始日の属する月から12か月超の利用者に介護予防訪問看護を行った場合】
(新設)1回につき5単位の減算
となりました。
訪問看護ステーションには、そもそも論として「24時間対応、重度者への対応」を強化することが強く求められていますが、一部の事業所では最低限の看護師配置しかせず、実質リハビリしか行わないというようなところもあるようです。
このことを重く見た厚生労働省は、訪問看護ステーションでのリハビリについて、診療報酬・介護報酬とも基本報酬を下げる等の措置が続いております。
今回の診療報酬改定においても、このことが言及されております。
厚生労働省がいっているのは、訪問看護のリハビリがダメであるということではありません。むしろ必要です。
訪問看護が訪問リハビリのような動きになっていることを、問題視しているのです。
訪問看護はあくまで「看護師が行う看護サービス」であるという、その本分を忘れてはならないということなのです。
当法人もリハビリサービスは行っておりますが、あくまで看護サービスがメインであることは言うまでもありません。
専門性の高い看護師の評価を充実
今回の改定では、専門性の高い看護師を配置してサービスを提供する事業所に対し、報酬を手厚くする等の評価をしております。
「褥瘡ケアにかかる専門研修を修了した看護師」の要件に「特定行為研修(総省管理関連)を修了した看護師」を含め、同行訪問の対象に追加されました。
特定行為研修修了者が、質の高い訪問看護提供の一翼を担うとともに、一般の訪問看護担当看護師に知識・技術を伝授することにも期待が集まります。
また「専門の研修を受けた看護師」が単独訪問をした場合に評価するものとして、新加算(専門管理加算。1か月に1回2500円)が創設されました。
加算の算定対象は、次のように整理されました。
・緩和ケアにかかる専門研修を受けた看護師が「悪性腫瘍の鎮痛療法、化学療法を行っている患者」に計画的な管理を行った場合
・褥瘡ケアにかかる専門研修を受けた看護師が「真皮を越える褥瘡の状態にある利用者」に計画的な管理を行った場合
・人工肛門ケア、人工膀胱ケアにかかる専門研修を受けた看護師が「人工肛門もしくは人工膀胱を造設し、管理が困難な利用者」に計画的な管理を行った場合
・特定行為研修を終了した看護師が「手順書加算(後述)を算定する利用者」に計画的な管理を行った場合
です。
さらに、医師が患者の同意を得て、訪問看護ステーション等の特定行為研修修了看護師に対し「特定行為の実施」にかかる手順書を交付した場合に、「手順書加算」が算定できるようになりました。
具体的には「気管カニューレの交換」「胃瘻カテーテルもしくは腸瘻カテーテル、または胃瘻ボタンの交換」「膀胱瘻カテーテルの交換」「褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去」「創傷に対する陰圧閉鎖療法」「持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整」「脱水症状に対する輸液による補正—の各特定行為」が対象となります。
特別管理加算を算定されている事業者であれば、十分対象になり得ますね。
このように、より専門的な知識を持つ看護師を多数配置することにより評価されるのは、大変喜ばしいことではあります。
反面、そういう看護師を発掘することは困難であることも事実です。
現実として、訪問看護師の確保自体が非常に難しい。
個人的には、訪問看護サービスに理解と情熱のある看護師の育成が、何より先決であるようにも思えます。
訪問看護サービスにおける「不合理」を是正する方策
今回の改定において、訪問看護を提供する現場で「不合理ではないか」と思われる点にも改定が加えられております。
まず「訪問看護ターミナルケア療養費」について。
これは「死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護提供を行う」ことが算定要件となっています。
しかし、
・退院日の訪問(退院支援指導加算のみ算定可、訪問看護基本療養費を算定できず)
・退院翌日の訪問(訪問看護基本療養費を算定可)
のような2回の訪問では、「2回の訪問看護基本療養費算定がなされていない」ために「訪問看護ターミナルケア療養費】の算定ができないという不合理が存在しておりました。
改定後は、退院日に退院指導加算のみを算定した場合でも「訪問看護を提供した」と見做すことを認め、上記の例でも訪問看護ターミナル療養費の算定が可能となりました。
さらに、退院日の訪問看護を評価する「訪問看護管理療養費(翌日以降の初回の訪問看護に6000円を上乗せ)」に関し、長時間の訪問看護を要する患者様に対して報酬が手厚くなりました。
具体的には、実際に長時間にわたる療養上必要な指導を行う場合の評価として、通常は6000円上乗せのところ「8400円」を上乗せされます。
「長時間の訪問看護を要する利用者」の対象となる方は、
・15歳未満の超重症児または準超重症児の方
・特掲診療料の施設基準「別表8」に掲げる方(例えば、在宅悪性腫瘍患者指導管理・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態など)
・特別訪問看護指示書または精神科特別訪問看護指示書にかかる指定訪問看護を受けている方
となります。
ICTを活用した遠隔死亡診断の補助に対する評価
新型コロナウイルス感染症のまん延を受け、医療機関でもオンライン診療が行われるようになりました。
世相を鑑みた対応であるとは思いますが、今回の改定において「オンラインによる死亡診断」が可能となります。
具体的には、医師がオンラインで死亡診断を行う際、患者の傍らに訪問看護師がおり、医師の指示を受けて死亡診断を行うケースについて、新たに加算を新設するもので評価されるというものですす(遠隔死亡診断補助加算 1500点)。
条件が伴うものの、この加算が新設されることにより、遠隔でも死亡診断が行えるようになります。
もっとも、人間の最期を看取るという重要な局面において、医師が訪問せずに死亡診断をするというのは何とも無機質である、という意見もあるかもしれません。
反面、例えば夜間に心肺停止となった患者様を医師が緊急往診するにしても、時間がかかる場合もあります。
確かに無機質なイメージはありますが、オンライン死亡診断が可能となれば、その後の対応がしやすくなるというメリットもあると思います。
訪問看護ステーションに課せられる使命
今回の改定は、特に介護報酬改定のように「社会保障費の適正化」という観点よりも、より在宅限界点を高めるための改定になっているな、と感じました。
もっとも、在宅限界点が高まれば、入院が減るわけですから社会保障費の削減にはなりますが・・・
患者様が、住み慣れた地域・ご自宅で、少しでも長く生活が継続できるようになるためには、ケアマネさんやヘルパーさん、通所系サービス、ショートステイ等のサービスが必要であり、医療機関等と連携を深めていくことが絶対に必要であり、過去のコラムでもお伝えしているところです。
その手段として、ICTの活用も、当法人が重要課題として取り組んでいる点であります。
地域包括ケアシステムの確立に向け、訪問看護サービスのニーズはますます高まることでしょう。
それに応えていくためには、私たち自身がもっとパワーアップしていかなくてはなりません。
反面、前述の通り、看護師の確保は依然として厳しいのも現状です。
当法人も、これまで以上に皆様にご評価いただけるサービスを提供することにより、情熱ある看護師に「選ばれる」事業所となるよう、一層努力していく所存です。
【参考URL】